「第7回林業研修会」の報告
紅一点の酒井さん
11月21日(月)に今年最後の林業研修を実施しました。予定の19日は雨で21日に延期しましたが、当日の朝はスゴイ寒気。しかし日中は快適な日になり、有終の美を飾るに相応しい日になりました。そして林業研修会にしてはいろいろと珍しい体験ができ楽しい会になりました。この勢いを来年まで引き継ぎ、素晴らしい森林インストラクター茨城に期待しています。
日 時 11月21日(月)9時から15時半まで
場 所 常陸太田市岡見 荷見の森
参加者 男女合計6名プラス荷見(山主)さん
1.林業研修 実施・体験した事柄
午前中も午後も、ヒノキの森(7年〜13年生)の枝打ちに汗を流しました。午後の作業を始めると北西の空に黒い雲が流れてくると、急に白いものがチラチラと落ちてきました。"あツ、雪だ!"と一瞬作業の手を止めて向こうの森を見る。音も無く雪が舞い降りて流れていく。この雪をビデオに撮った人もいましたが、ここが福島県との境であることを認識させられ、"サムイー!"研修会と思いきやそれほどのこともなかった。
今年中にはぜひ終了したいと願っていたブロックは完全にクリアー、皆さんで喜びを満喫しましたが、森の尾根から林道に流れる斜面で、土が軟らかいことと水が多いことなのでしょう、若い木が倒れているのが目に付きました。残念だが10%程の木はあたかもネマガリダケのように匍匐し、その先端が"ドッコイショ!"と立ち上がる姿に悲しい思いもしました。(木も一生懸命生きている!)
2.その他の研修
(1) シダの観察と採取
春に植え付けし、夏下刈りした森の隣に、沢山のシダが群生しているのを思い出し、昼食後には道なき道の森を散策し、シダの観察と採取をしました。夏には生い茂った林床も大部分は枯れて、名を知るのに手間取ったが、ヤマイタチシダ、ナライシダ、シラネワラビ、ヤマイヌワラビ、イノデなどは容易に同定し、各自が珍しいと思うシダを採取し、互いに見せ合った中でピノキオのように得意満面の顔も見かけました。(誰だったかな?)
(2) 伐採地の見学
近くの森で作業員が伐採をしていました。普段見られない伐採風景をチョット覗いて見ました。樹齢100年前後のスギが多く、なかには200年を越える大スギもありました。それは運搬する大形機械でバランスがとれず、途中で諦めたのか垂直に立っていました。まるでそこに生えている木に見え、"アレー?変な木だな!"と皆で首を傾け考えること数秒。
① 凍裂*1のある大木
伐採し玉切りした何本かに中心まで凍裂の傷跡が生々しく入っている材を初めて見ました。山主さんの話では、この地では60年を過ぎると水分の多い場所では凍裂が発生しやすくなると言います。残念なことですが凍裂が発生すると材は商品価値がなくなります。
(*1;Googlで「凍裂」を検索 森林総研の研究報告を参照してください。)
② 年輪の話
小学校の時に先生が言ったことを覚えているでしょうか?「森で道に迷ったら切り株の年輪で方角を確かめましょう!」と。「年輪の狭い方向が北です。」とも、誰もが聞いたことでしょう。
年輪の幅が変わるのは光合成の働きによります。斜面に生える木、風の道に生える木など木はその環境に合わせて年輪の幅を変えます。だからなかなか同心円に近い年輪の木はありません。そのうえ、針葉樹と広葉樹で年輪の狭い・広い方向が異なります。一度本やインターネットで調べてみましょう!きっと目を白黒させるか、意味が判らないかのどちらかに。
結論は山で迷った場合は、くれぐれも言いますが切り株を探して方向を確かめるのは止めましょう!年輪が見えるような鮮明な切り株はめったにないし、また帰れなくなりますから・・・。
③ 斜面に生える樹木は根元で曲がる
これは年輪に関係することでもありますが、斜面や風の道に生える木の根元はスイスのホルン状に曲がります。その曲がりは伐採後に真直ぐになろうとする力が働き材の形状が狂ってしまうそうです。これは法隆寺の宮大工をしていた西岡常一棟梁が著書の中で書いていますが、この部分を「あて」と呼びますが、あては材の形状が変化するので、"期待できない=「アテにならない」"の語源だそうです。
④ 炭焼きの話
作業員の人は隣村福島県の塙町の人でした。昼食には軽トラで自宅まで帰って食べてきます。その人の話ですが、東日本大災害で集落の炭焼き釜は全てが壊れてしまったそうです。それは残念なことですが、それより今でも炭を焼いていることに驚きを覚えました。その中で、コナラやクヌギの炭は一般的で、だいたい一度に焼く量は「40俵」程度だそうです。40俵なんて表現は尺貫法以降耳にしていませんでしたが、この地ではまだ「生きた言葉」でした。そしてコナラなどは釜の空間の80%の体積の炭を生産できるが、ウバメガシ(驚いたことに塙でウバメガシ?)の炭(備長炭)も焼いているそうです。しかし備長炭は釜の中に作業域が必要なので数量は60%程度しか取れないそうです。こんな貴重な話を聞いたのは数年前に千葉の清澄山で聞いて以来のことです。しかも清澄山の炭の原料はマテバシイでした。あちらは暖温帯で茨城は冷温帯の違いをフト思い出しました。
⑤ 切り株更新
伐採現場への林道で倒木更新ならぬ「切り株更新」のヒノキ(右の写真)を見つけました。土までの距離が大分あるので根が届かず、大きくなれない(枯れてしまいそう)かもしれませんが、自然の力強いエネルギーが我ら一同に突き刺さってきました。ぜひとも明日は"アスナロ"なんて言わずに、"ヒノキ"になって欲しいと皆で願っていました。
3.最後に
皆さま、今年は1年を通して不運な天候で、思ったような林業体験ができませんでした。来年は(私に来年はあるのかな?)ぜひとも天候に味方してもらい、この素晴らしい林業研修ができることを、そして他の会員の皆さまや一般参加の皆さまが私たちを困らせるほどに参加して欲しいと願っています。今年1年参加していただいた皆さまに感謝し、来年も幸多いことをお祈りし、最後だからといろいろなことを書きましたが、よろしくお願いします。また山主の荷見信孝さんへも一層の感謝を申しあげます。
担当 林 聰一郎
副担当 鈴木 次夫
「林業研修に参加して」 酒井さん(女性)
11月21日、林業研修に参加させていただきました。初めてでしたが、林会長から鋸の扱い方を教えていただき、複層林の下層の7〜13年程度の杉の枝打ちをしました。最初はうっそうとしていた斜面の林も会員の皆さんが枝打ちを進めていくと、徐々に作業をしている皆さんの姿が見える様になり、上層の樹からの木漏れ日が足元の林床を射し始め、明るい林に変わっていきました。お昼休みにはシダの観察をしながら、プロの職人さんの切り出した木などを見学したり、林の中を散策したりしました。
往復206kmの道のりや、突然降りだした雪を差し引いても、たっぷりの満足感に浸れた充実した一日でした。林業研修の会員のみなさま、楽しい一日をありがとうございました。